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【演劇論】音効という、もう一人の役者
2006年9月。私はトリガーライン第2回本公演『KCN』で、音響効果スタッフの角張正雄氏にお会いしました。
角張氏の音との出会いは、私の中で大変衝撃的で、今の私の『劇中音』に対する考えのベースになっています。

今回は、その話を。


私は学生演劇をやっていた頃から、
TVドラマ・TVアニメ・映画において、使われる音楽の方向性には違いがあると考えていました。

 ドラマ:作品の主題歌があり、それがアレンジされ、繰り返し使用される。
 アニメ:作品の登場人物の感情を代弁する叙情的音楽や、場面の雰囲気を表現するコミカルな音楽。ジングル。
  映画:作品の世界観を表現する壮大な音楽。

すべてがこれに当てはまるわけではないでしょうが、
先日、NHKのアニメギガに梶浦由記さんが出演されており、
音楽を作るとき、人物寄りか、世界寄りか、と言った話をされていました。
見ていた私は、まさに同じ事を言っていると感じました。

 では『KCN』における角張氏の音響効果とは、なんだったのか。
 私が考えるに、上記のどれでもありませんでした。


芝居の中でかかる音というのは、主に2種類に分けられると考えています。

 1.特定のシーンでかかる音楽
 2.シーン転換時にかかる音楽

まず角張氏は、特定のシーンで音楽を入れることをしませんでした。

私の言葉で角張氏の意図を書いて良いものか悩みますが、

角張氏の主張を要約すると、
 「このシーンに音楽が必要だと感じるのは、まだ役者の演技が定まってないからである。
 かけろと言われたら用意はするが、おそらくそれは、役者なり演出家の負けを意味する。
 台本に書かれている雰囲気を役者が表現できていれば、このシーンには音楽は必要ない。
 だから自分は、ギリギリまでここに音を入れるのを待ちます。」

というものでした。

演出補として現場に参加していた私が初めてこれを聞いた時、
まさかスタッフが、ここまで演出家を追い込むのかと、大変驚きました。

そして次に、角張氏が転換時に入れた音に、驚いたのです。

私は今まで、転換の音というのは「A→A'→B」のように、
Aのシーンの雰囲気をA'で盛り上げ、そして断ち切り、
別なシーンBへと向かうための音楽(A')を入れていました。


私が今まで行ってきた「A→A'→B」の配列の場合、
A'はAの雰囲気を踏まえた上で選択されるものの、
その主旋律までかけないと聞いている側が気持ちが悪く、
結果的に、A'=Cと言った、独立したシーンとして存在してしまっていました。
つまり、「A→A'→B」=「A→C→B」となり、
全く独立したCという時間が存在してしまうことになるのです。

そもそも開き直って、「A→C→B」でいいじゃないかという、演出家もいると思います。
ある程度の時間稼ぎと、仕切り直しがなければ、お客が付いて来れないと考えるからです。


しかし角張氏は、そう考えていた劇中音における私の考えを見事に打ち砕いてくれました。

では角張氏は、実際どのような音を用意したのか。


角張氏は「A→B'→B」のように音を配置し、
しかも音楽ではなく、Bのシーンで鳴っているだろう音をミキシングし、
それをトランスのようなリズミカルのものにして流して、場面転換したのです。

「A→B'→B」のスタイルで場面転換した場合、B'は限りなく短くても、場転は成立します。
逆にB'が限りなく短くなった場合、お客はその瞬間(B')を消し去って、
物語を追い続けることができるようになるのです。

つまり、限りなくB'をゼロに近づけ、「A→B」へ転換できるわけなのです。


私の学生演劇の演出は、劇中の音楽が多いことが特徴でした。
各シーンで頭の中で音楽が鳴り響き、その音楽に乗せて、各シーンを創っていました。

 しかし、今は考えが違います。

頭の中で音が鳴った場合、どうやったら役者の台詞だけで、
その音楽の雰囲気を客席に伝えられるようになるかを、考えるようになりました。


そして、そうなってくると、役者が発する音一つ一つにこだわって演出せざるを得なくなるのです。


今の私は、音効は、もう一人の役者だと考えています。


舞台上で二人が会話している中、脇でもう一人が歌い続けたら、どう思いますか?


うるさくてかなわないですよね。

さて、『辛酉年・文久秘記』では、どうやって音を入れるか。
かかった音楽しか頭に残らないような演出は、役者に対して失礼なのだから。
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