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東京藝術大学大学美術館「近代洋画の開拓者 高橋由一」(2) (2012/4/28~6/24)
前回に引き続き、東京藝術大学大学美術館「近代洋画の開拓者 高橋由一」(2)を書きます。

東京藝術大学大学美術館「近代洋画の開拓者 高橋由一」(1)の続きになります。

前回は人物画について書きましたので、今回は風景画と静物画の感想を書きます。

由一は、西洋画が日本に普及するには、日本人がより多くの西洋画を目にする機会を増やす必要がある考えていました。
そのため、由一は精力的に新作を発表しており、風景画もたくさん描いています。

その中から、気に入った作品を1枚。

《真崎の渡(まさきのわたし)》高橋由一(製作年不明)町立久万美術館蔵
《真崎の渡(まさきのわたし)》高橋由一(製作年不明)町立久万美術館蔵

真崎は現在の荒川区の南千住辺りで、描かれているのは隅田川です。
写生帖(しゃせいじょう)に明治6年8月29日(1873年)にスケッチしたものを、後に描いたそうです。

久万美術館のホームページによると、1873-1876年の間に描かれたないかと書かれています。

由一の作品の中では、明るい作品になります。
画像で見てもうまく伝わらないと思いますが、清涼感を感じさせてくれるのです。

ネットで調べたところ、三重県立美術館のホームページに、このような解説を見つけました。

>「油彩画は、これら〔《写生帖第Ⅳ冊、Ⅵ冊》〕の素描と同構図であって、
>墨水をへだてて真崎稲荷付近を望み、中景に葦の生えた中洲を描き、近景画面右手に葉の茂った樹木を表わしている。
>しかし、異なる点は油彩画においては河に帆船と渡舟を描き、さらに画面右端に老樹の幹を加えた点である。

やはり。

素人の私の感想ですが、他の風景画の中は、これは構図的に必要ないんじゃないかと思うものもあったのです。
そして、そう感じる絵の解説を音声ガイドで聞くと、案の定『写真をもとにし・・・』と言っているのです。

この『真崎の渡』は、スケッチから製作に取りかかるまで日を置いたからこそ、
当時の印象が美化されたのではないかと思っていたのですが、右下の幹や船も書き加えられていたのですね。

やはり由一は、写真を見て仕上げたがゆえに、つまらないものにしてしまった作品がある気がしてきます。


では、メインディッシュの3本の鮭をどうぞ。

左-        《鮭図》高橋由一(1887年以降製作)山形美術館寄託
中央- 重要文化財《鮭》高橋由一(1877年頃製作)東京芸術大学蔵
右-        《鮭図》高橋由一(1878年以降製作)笠間日動美術館蔵

《鮭図》高橋由一(1887年以降製作)山形美術館寄託重要文化財《鮭》高橋由一(1877年頃製作)東京芸術大学蔵《鮭図》高橋由一(1878年以降製作)笠間日動美術館蔵


由一=鮭というのは、当時から有名であったらしく、
山形美術館寄託の鮭図と、笠間日動美術館蔵の鮭図と併せて3本の鮭が展示されていますが、
私は中央の東京芸術大学収蔵の鮭が、段違いにすばらしいと感じました。

日動美術館の板に直接描かれた鮭図も確かにすごいのですが、私にはどうもピンと来ないのです。
どうしてだろうと思いつつ振り返ると、そこにあった『鴨図』が眼に入ってきました。

《鴨図(かもず)》高橋由一(1878年製作)山口県立美術館蔵
《鴨図(かもず)》高橋由一(1878年製作)山口県立美術館蔵

ちなみにこの『鴨図』、500円で借りた音声ガイドによりますと、
日本画で鴨を描く際は、花鳥画としての生きた鴨を描くのが普通ですが、
由一は、油絵をより身近に感じて欲しいという思いから、食材としての鴨を描いたとのこと。


私はそれを聞いて、本当にそれが理由だろうかと思ってしまったんですよね。

あくまで素人の感想ですが、由一は『眼』を描く事を苦手としていたのではないかと思うのです。

前回見て頂いたヤマトタケルも、実は目をつぶっているんです。私はそこがずっと引っかかっていました。
私は演劇をやっているせいか、『眼』にこだわってしまいます。生きた『眼』には、生命力が宿るからです。

先ほどの三本の鮭は、どう見たって死んでいるわけですが、
真ん中の重要文化財の鮭は、例え死んでいても、品格があります。

これは、由一が鮭を描こうと思いたち、その魅力を引き出そうとした『写意』が作品に込められているからこそ、
ただの食材としての鮭ではなく、品格を備えた、輝きに満ちた鮭になっているのではないかと思うのです。

是非この機会に、3本の鮭を見比べてみて下さい。

この鮭だけでも、必見の価値がありますよ。


次回は同時開催されていた、芸大コレクション展『春の名品選』について書きたいと思います。
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